駆動系もリフレッシュ、の巻。 [Cagiva Cucciolo]
仔犬号の外装をリフレッシュしたことに気を良くして、職場にも乗って行った。
以前は都内で通勤に使って、一日50km近く乗っていた時期もある。
今の我が家から職場まででは、多少寄り道をしてもメーターは1日で20kmも進まないので
なんだかエンジンや駆動系が十分に暖まる以前に用事が済んでしまうような気がしていた。
そう思い始めると、少ししっかりと距離を稼いでみたくなる。
先週の休み前日、仕事の用事が出来たのにかこつけて、夕方に辰野の先まで出掛けてみた。
用事が終わった頃には、もうすっかり夕暮れ。そこから我が家までの30数キロはとても楽しかった。
☆☆☆
翌日は休み。
ふと、外装ばかりではなくて久々に密閉されている駆動系も開けて
機械的な消耗具合も確かめた上で、
手を打てるところがあればみておきたいという気分になった。
ただし、ここに手を付けるとなると、それなりの時間が掛る。
前回、駆動ベルトを交換したのはちょうど8年前の7月で、
購入してから4年半、14,000kmほど走ったところだった。
その後の8年で伸びた距離は11,000kmほど。ペースはかなり落ちている。
とはいえ、8年前に開けた時には駆動ベルトの交換しかしておらず、
スクーターの場合に消耗が進むはずの変速器=バリエーターの中は
いったいどうなっていることやら。
8年前にもベルト・ケースの中はそれなりに汚れていたから
今はさらに凄いことになっているかもしれない。
意を決して、道具を揃え、いざ開封...したのだけれども
あれ、カバーの内側は意外にそれほど汚れていない。
カバーを外して、最初に見える風景も至って平和。
セル・モーターを回すと上に見えるギアがモーターのピニオンと噛みあって
下に見えるクランクと一体になった大きなフィンの付いたギア(=プーリーの外側)を
回して始動するようになっている。
8年前に手に入れておいた特殊工具をつかってプーリーの外側を固定して
中央のナットを緩めると、クランク・シャフトと一体になったバリエーターを抜き取ることが出来る。
前回は事前勉強もしていなかったので、外側のプーリーを外してベルトを交換しただけだった。
というわけで、バリエーター一式を抜き取ってみると...
内部は恐ろしいほどにギトギト。うーむ。
仔犬号のエンジンはPiaggio製4stエンジンとしては比較的初期の製品で
クランク・シャフトやオイル・ポンプ周辺からオイル漏れが起きやすいという話を聞いたことがある。
もしや、と思ってよく観察すると、
どうもクランク・シャフトのオイルシール周辺から飛び散ったオイルではなく
バリエーター・ケースから飛び散ったものが遠心力でへばりついたように見える。
取りあえず、パーツクリーナーをほぼ1本使って、徹底的に洗い流す。
うむ、これで良し。
ここで、抜き取ったバリエーターを分解してみる前に
例の部品取り車にもバリエーターが付いていたことを思い出して
外して比較してみることにした。
手前が仔犬号に付いていたもの、奥は部品取り車から外したほぼ未走行のもの。
部品取り車は駆動ケースの外側とプーリーの外側が元々無く、
ケース自体が空気にさらされたまま10年近く経っているので
バリエーターの表面とワッシャー類はかなり劣化が進んで荒れてしまっている。
仔犬号のプーリー表面の当たり面は均等にベルトが当たった様子がうかがえて
妙な段付きなども無く、健康状態は良さそう。
写真の↑のワッシャーは、前回8年前に自分が組み直した時にはめ忘れたらしい1枚。
外側のプーリーを固定するナットの下に挟むべきもの。
走る機能には大きな影響は無さそうな箇所だけれども、
今回気が付いて良かった。
2万5000km走った仔犬号のバリエーター内部。
見事に黒く脂っぽい汚れかすが溜まっている。
バリエーター・カバーの隙間から溢れたこの汚れが
回転しながら飛び散って溜まったのが、冒頭のギトギトの中身だと想像できた。
6つある黒い円筒状のものがウェイト・ローラー。
これがエンジンの回転が上がるにつれて遠心力で外側に移動し、
その時にバリエーター内部の斜面に押し当てられてプーリーを広げる方向に動いて
変速が無段階で行われる、というのがこの形式の変速器=CVTの基本原理。
ローラーが滑らかに動いてくれないと、変速も滑らかに行われないくなるので
出来るだけスムーズに動くようにしておかないといけない。
こちらは部品取り車のバリエーター内部。
新車の時には、ほぼ透明なグリスがたっぷり塗られていたのではないかと想像する。
仔犬号のバリエーターから外したウェイト・ローラー。
予想どおり偏摩耗はあったけれどもごくわずかで
内部の金属部分が露出してしまうほどの変形は無し。
ネットで色々な人の整備記録を見るかぎりでは、これはかなり具合の良い方だと思う。
ここで、組み直すにあたって部品取り車の部品を流用しようかどうかと考える。
ローラーは新品同様なので迷わず交換してしまうことにして、
問題はバリエーター本体。
ローラーとの接触面が新品になるのは魅力ではあるのだけれども
ベルトと接触するプーリーの表面は、長年放置されていたせいでかなり荒れているのが気になる。
もう一つ、部品取り車のバリエーター本体には、バランス取りのために機械加工されたような
丸い削り跡が2箇所あった。仔犬号のものには、そういう加工跡は無い。
しばらく眺めて考えて、バリエーター本体は現状のままのものを使い
ウェイト・ローラーだけ部品取り車のものに換えることにした。
再びパーツクリーナーをたっぷり使ってバリエーター内部を徹底的に洗い、
ローラーを組む時には諸説あるものの、グリスをほとんど塗らずに組んでみることに。
というのも、開け方の手順を忘れないうちに、また様子を確認してみようと思ったから。
スターターのギアも外して余分なグリスやごみを落とし、
全てをくみ上げる前に綺麗になったケースの内側を眺めてみる。
セル・モーターのギアはこんな風に半分だけ顔をのぞかせていて
それを受けるスターター・ギアの軸受け部分はメタルのブッシュ。
高圧が掛りそうな部分にはスレッド・コンパウンドを少量塗って
バリエーター本体⇒駆動ベルトを挟む⇒スターター・ギアを嵌める⇒プーリー外側をはめる
⇒特殊工具を使って高めのトルクで固定、という具合で、完了。
ふう。
外側の駆動ケースに組み込まれたキック・ペダルのギアも、いい機会なので一度外して
汚れを落としてからグリス・アップして組み直しておいた。
ケース全体を元通りに組み直して、まずはセル・スターターで始動。
うむ、全く問題ない。
久々にキックでも始動してみる。スムーズに簡単に掛る。ちょっと嬉しい。
すっかり、もう夕涼みの時間。車庫の扉を開けて、外へ。
うん、滑らかに加速して、いい感じです。
よし。
☆☆☆
というのが先週のこと。
外装と駆動系をリフレッシュして、あと機械的に気になる箇所は
YASHさんにも言われたサスペンションくらい。
まあ、楽しみは先々のためにも取っておくとして
今回は幸い大したお金も使わずに済んでいるので
以前から換えてみたかった部品を手に入れてみることにした。
それは、この黒くてちょっと安っぽい印象のキック・ペダル。
'90年代後半のPiaggio製ユニットを積んだ車両の多くが
このタイプのキック・ペダルを装着しているのだけれども
その後のVESPA ET4以降に付いているアルミ製のキックペダルに替えてみたかったのだ。
形が綺麗だし、何よりオリジナルの鉄&ゴム製のものと比べて圧倒的に軽いのが魅力。
Piaggio純正部品で、送料含めて丁度4,000円ほど。
なんだかすっきりとして、いい感じではないか。
ほぼ同じ形状で、50cc用の短いものと、125-150cc用の長めのものがあり
今回は125cc用のものにした。
通勤にも数日使って、先週の駆動系分解以降、今日までの走行距離はほぼ100km。
天候も不安定だし、もう一度開けてみるかな。
と、これが今日の状態。
やはり、クランク・シャフトのシール自体は問題が無いようで、綺麗に乾いている。
よしよし。
グリス無しで組んだバリエーター内部も今のところ綺麗。
まあ、100kmしか走っていないから当然だろうけれども。
でも、本当にグリス無しが正解なんだろうか、と少し不安になって
とある方の整備記録でお勧めされていたこんな製品を使ってみることにした。
呉工業の「ドライファストルブ」という。
シリコンスプレー的な使い勝手なのだけれども、速乾性でさらっとしている。
効能を見ると「高圧の掛る作動部に最適」なんて言葉も。
今一度ローラーを外して空拭きしてから、このドライファストルブを全体に吹きかけて組み直し。
2週続けての作業で手順がすっかり頭に入っているおかげで、
思いのほかスムーズに作業できた。
暑い時間を避けて少し昼寝もして、
夕暮れの雲の動きを眺めながら試運転へ。
あれ、先週よりもさらに滑らかなんじゃない?
大変良い感触であります。
少し足元も引き締まって、またこの先何年かは楽しんで行けそう。
この夏は、こんな風にスクーターの手入れをしながら
休みの日は妻が育てている野菜や果物の収穫を楽しんでいた。
枝豆、空豆、南瓜、じゃが芋、そして葡萄。
それにしても、この暑さでは乗る気が起きるのはスクーターぐらい。
来月には「跨るマシン」を引きずり出せるかな...
★忘れないようにメモ:Cagiva Cucciolo エンジンオイル交換、Fuchs Hyper TITAN 5W-40 25,100km
私はスクーターという乗り物を自分の物として持った事がないので、
こういう変速機に関する整備にはまったく疎いんですが、
なかなか興味深く読ませて頂きましたよ。
打ち捨てられた原付の内部にも、こんな小宇宙があるんだよな、なんて。
夏の夜、小排気量のバイクでちょっと遠出をするのは、
なんであんなに楽しいんでしょう。
大きなマシンでズドーンと遠出するのに慣れると
つい忘れてしまう、あの遠い日から続くような感覚。
来月はバイクで夏の夜歩きでもしましょーかね…。
by YASH (2015-07-30 22:32)
うちのリードも現在ショップにてオーバーホール中です。
フロントフォークと駆動系を依頼したら、各部チェックでキャブの分解清掃とステムベアリング交換もした方が良いとの事で、購入時の車両価格よりも高い見積もりが(笑)
そのショップのメカニックさんはリードは自分も乗っていたし、得意らしく・・・
チャンと手入れすれば10万キロぐらい走れるのが2stリードの良いところだと言ってました。
スクーターのリフレッシュが終了したら、次はいよいよCLの番かな?
そんな話も次回のツーリングの時に!
by rascal (2015-07-30 23:51)
同じKUREの潤滑スプレー、我が家ではスキカルに使っています。(爆
ここまでかわいがってもらえるスクーターって、
なかなかないんじゃないでしょうか?(◎o◎)/
暑い季節のリフレッシュ、スクーターが涼しげに見えます。(笑
お庭の野菜や果物が、とっても瑞々しくて奇麗な色ですね。
ぶどうの収穫がとっても楽しみです。(≧∇≦)
by knacke (2015-07-31 08:31)
こんにちは。
御手入れお疲れ様です。
こうやって手の入ったスクーターも、あまり無いと言うか、今日もジテツーの帰りに信号で追い付いた、御根井ちゃんのスクーターが乗りっ放しの…(哀)
by HIRO (2015-07-31 22:19)
☆YASHさん、そう、乗りっぱなしで健気に動いている原付スクーターにも
こういう変速器がちゃんと付いてて、黙々と働いているんです(笑
分解してみると、ほんとに良く思いついたものだなぁと思いますね。
我が家の辺りだと、陽が陰ってからはそれなりに涼しさもあって
ちょっとした田んぼの畦とか小川に沿った農道なんかを走り繋いで
家に帰るのがとても楽しいんです。
すっかり花びらの落ちたひまわりなんかを、横目で見ながら。
部分的に切り取られた夏は、なかなか好きなんですけどね。
来月は、ちょっとせせらぎでも探しに行きましょう。
by harry (2015-07-31 23:05)
☆ラスカルさん、世田谷のお店、なかなか感じの良さそうな所ですね。
メカニックさんが機械大好きな感じがして。
距離を走っているスクーターは、ステム周りにガタが出てるものが
結構多いみたいですね。
自分のも、ハンドルを外した時に観察してみたんですが、
造りも弱そうだし、雨の日に乗る機会が多いと傷みやすいのかも、
なんて思いました。
CLはね、右のクランクケースの塗装が経年劣化で浮いてきたのが
気になってきて、新品部品がオークションで格安で出てるのを見つけて
手に入れてあるのです。えへん。
なんていう話は、次回にね。
by harry (2015-07-31 23:10)
☆knackeさんがこのスプレー使っているとは...しかもスキカルに(笑
でも、用途としてはピッタリな感じではありますな。
うちのバリカン君にも試してみようっと。
この大きさのスクーターって,お気軽な普段の足として選ばれるのが
ほとんどで、傷んだら「はい、さようなら」なのが普通なのかも。
でも、せっかくの縁で我が家に来たので、こうなったら諦めがつくまで
乗りつぶしてあげようと思ってます。
ブドウね、色が変わるのを待ってるんだけど、ちゃんと出来るかな...
by harry (2015-07-31 23:16)
☆HIROさん、こんばんは。
輸入車の原付二種スクーターっていうと、マニアックに駆動系を
弄りまくって楽しんでいる人か、本当に乗りっ放しか、
どっちか両極端な場合が多いような感じがしますね。
走っていて目に付く原付スクーターも、大概はタイアがペチャンコ
だったり、マフラーに穴が開きかけて凄い音がしてたり...
小さな機械に愛情注ぐのって難しいのかもしれないな...なんて。
走る機械である以上は、最低限の整備はしておきたいと思ってます。
by harry (2015-07-31 23:22)
久しく手を油まみれにしていないので
なんか懐かしく記事読んでいました。
夏休み入って、ちょっと落ち着いた感じですw
そうそう
かみさんが “ランブレッタ知ってる?”
って突然言いだして
“え?スクーター?”
なんか、あるアニメ作品に出てきたらしく
・・・欲しいらしいですwww
by FTドルフィン (2015-08-10 07:17)
☆FTドルフィンさん、たまには油まみれも楽しそうでしょ(笑
自分も、ここまで暑いと外に出る気がしないので
開き直って日陰の車庫で風通しを良くして、黙々と弄ってたら
なかなかの気分転換になりました。
奥さまとスクーターでお散歩、いいですねー。
最近、プジョーから出ているちょっとランブレッタ風の
レトロなスクーター、可愛いんですよ。
www.youtube.com/watch?v=tcTtXcWbCOU
あまりに暑い時は、クルマよりも快適な気がします♪
by harry (2015-08-10 21:11)
きちんと整備された機械って気持ちいいですよね。
わたしも身の回りのあれこれを整備しなくちゃ、と思いました。
とりあえずは芝刈りの機械を...それからと考えはじめると、
やりたいことやらなきゃならないことがたくさん出てきそうです。
by ナツパパ (2015-08-13 21:02)
☆ナツパパさん、おはようございます。
自分はたまに少し時間が出来た時に、身の回りの髭そりとか
扇風機なんかを少し分解して掃除して、油を差したりするのが好きで
元に戻して音が静かになったりすると、とても「いいことをした!」
という気分になるんです(笑
息抜きという意味でも、機械を触って具合が少しでも良くなると
自分が関わったことの意味が確認できて楽しいんですね。
芝刈り機、やりがいがありそうですね。楽しそうです(笑
by harry (2015-08-19 23:20)