仔犬号、延命治療の巻。 [Cagiva Cucciolo]
我が家にあるオートバイのうちで一番小さな仔犬号も
気がつけば、もう手に入れてから12年以上。
最近は出番も少なくなりがちだったけれども
この梅雨の間に少し真面目な修理をして、延命をはかることにした。
それなりに愛着もあり、まだ手放す気にはなれない。
この子を手に入れたのは2002年の暮れ。
渋谷区の狭いワンルーム・マンションに住まいを移して
通勤や普段の足に、125ccクラスのスクーターが最適だろうと思って探したのだった。
出来れば飽きの来なさそうな、少しクラシックな雰囲気のあるものがあれば...などと思って。
幾つか候補はあったけれども、デザインが一番魅力的に思われたAprilia Scarabeo(写真左)は
実際に目にしてみるとワタクシの用途には少し大き過ぎるように思え、
機械としては信頼できそうだったPiaggio Liberty(写真右)はデザイン的にシャープ過ぎ、
もう少し穏やかな表情やゆったりとしたシートが欲しいと思った。
台頭し始めて勢いのあった台湾製品はどうにもデザインが子供っぽく、
日本製のスクーターには魅力的なスタイルのものが無かった。
そんな時、とある大型量販店に立ち寄ってみると、
このCAGIVA製スクーターが複数台在庫していた。
形が好みに合ったのと、駆動系などの中身の大半がPiaggio製なことを確認し
一度家に帰ってから専門誌を調べ、成り立ちの面白さも気に入って
少し値切らせてもらって、25万円ほどで購入した。
▲上:Cucciolo Concept 1997(?) 下:Cucciolo 125 市販モデル
CAGIVAというと、'80年代後半から'90年代に掛けてはDUCATIを傘下に収めるほどの勢いがあり
ラプターとかエレファントなんていう個性的な大型車も発表していて、
一時期はイタリアにおけるオートバイ業界の王者になりそうな雰囲気があった。
それが、あれよあれよという間に影が薄くなり、商標権を獲得したMVアグスタの名の方が
前面に出てきて、今ではCAGIVAというブランドそのものはもう忘れかけられている。
勢いの止まり始めた'90年代後半、CAGIVAが発表した「Cucciolo Concept」なるスクーターがあった。
地道にコミューターを造って、財政破綻を何とか避けようと考えていたのかもしれない。
そのコンセプト・モデルが市販化された1999年、CAGIVAはせっかく手に入れたDUCATIを売却して
21世紀に突入する頃には「ああ、そんなメーカーがあったね、そういえば...」
と言われてしまう程度の存在になってしまっていた。
と、そういう時代にワタクシはこの会社の製品を手に入れたというわけ。
だって、なんだか可愛かったんだもの。
修理をしてリフレッシュしようと思い立ったきっかけは
こんな新品同様の部品が手に入ったこと。
そう、普段足を乗せている床の部分であります。
実は、このフロアにはまっているゴム製のマット状の部品が随分と擦り減ってきて
12年&25,000km分の汚れも染み付いてしまい、何とかしたいと思っていたところだった。
でも、こんな部品が中古品で手に入るなんて夢のよう。
黒ずんでしまった元のマットと見比べると、その違いは一目瞭然。
それにしてもこんな綺麗な新品同様の部品、今まで何処で使われていたのだろう...
足元が綺麗になったのに気をよくして、長年の課題だったひび割れてしまっているカウルを
以前から用意しておいたスペアの部品に換えてみることにする。
オークションで鶏ガラのような状態の部品取り車を15,000円で手に入れたのはもう10年ほど前。
幸い、その部品取り車のハンドル下側のカバーはほぼ完璧な状態だったので
車庫に塗装場所を設けて、数日の間、仕事から帰ってから自家塗装をして、素材を準備。
※トヨタ車用のメタリックカラーを数回吹き付け、クリアー数回を重ね吹き
塗装がしっかり乾くまでの間に、ハンドル周りを解体。
一般的なオートバイと違って、スクーターはカバー状のパネルの中に配線類が詰め込まれている。
後で復旧するのに困らないようにと写真を撮っておいたつもりだったのに
肝心なハンドル・カバー側のスイッチとのコネクタ部分を撮っていなかったせいで
結局は通電しながら試す羽目に(笑
12年分の埃を落として、この機会にブレーキ・フルードも交換しておいた。
スロットル・グリップの作動部はしっかり清掃して、新しいシリコン・グリスを。
メーターパネルもせっかく外したので、普段見えない所の埃を落としてから
艶消しのシルバー塗装だった部分をマットな黒で塗ってみた。
ちょっと気分転換。
部品取り車にはあまり使われていなかった様子のヘッドライトが付いていたので
自分の仔犬号のレンズと見比べて、透明度がしっかり残っている部品取り車のものに交換。
こうしてみると、12年走ったレンズは結構黄ばんでいる。
パッとしない明るさのライト・バルブはH4BSというあまり見掛けない規格で
付いていたのはスロバキア製だった。
数年前に一度球切れして、その時に部品取り車のバルブにそのまま換えてある。
これもいい機会なので今手に入るハロゲン・バルブに。
日本製で3,000円弱。
▲上:ノーマルの状態 下:バルブ変更後
うむ、それなりに明るくなった様子。
こちらに越してきてから、本当に真っ暗な夜道を走る機会が増えたので
少しでもライトが明るいのに越したことはないのだ。
というわけで、数週間かけた延命治療も、ひとまず完了。
ふう。
塗料関係とライト・バルブ、フロア・マットなどの購入品の合計がちょうど1万円ほど。
あとは自分の手間と時間だけ。
作業中に確認したエア・フィルターのスポンジもまだ劣化はしていなかったので
この先しばらくは具合良く楽しめるのではないかと思う。
何より、割れていた部品が綺麗になり
乗っている時に見える景色が少し変わって、新鮮に感じられるのが楽しい。
きっと車両を買い替えたって、その楽しさが半永久的に続くわけではないしね。
さて、あと何年この子と過ごせるかな...
せっかくなので、出来る限り長生きしてもらおうと思っております。
以上!
モノを大切にするってこういうことなんだなあ、と拝見しました。
気に入ったモノは長く使いたい、とよく言われますし、わたし自身も
そういう考えに賛成です。
...でも、それには相応の覚悟と手間が必要なんですね。
身の回りの様々なモノたちに、もう一度目を向けてみることにします。
それにしても、デジタル時代になってものの寿命が短くなりました。
by ナツパパ (2015-07-18 08:56)
欧米ではDIY普通なのにね。。。
日本では乗り換えドンドン消費が
経済の常識のような...いつまで?
by RO (2015-07-18 19:23)
黒いメーターパネルは夕景に似合いますね^^
残念ながらharryさんの用途には合わなかったものの
ウチの用途にはピタリと合致したSCARABEOが縁で、
こうしてつながりができたのもまた愉快だなぁと思います。
ウチのは中身を250GTに変えて以降、大きく手は入れていませんが、
まだまだ元気に走ってくれています。
いつかは仔犬号と轡を並べてみたいですね^^
by mani (2015-07-18 20:57)
こんにちは。
延命工作?お疲れ様でした。
CAGIVA…ウチのモン吉の給油蓋にも、しっかり象のマークがありました(1994製)
世の中には、色々な使い方をされる方が居る訳で…ウチのJD06なんて、32年モノなのに(メーターに手を入れていなければ、)2000km台(笑)
気に入ったものは長く楽しみたいですね。
by HIRO (2015-07-18 22:33)
お家にもピッタンコな、ちょっとかわいらしい仔犬号。
harryさんの分身のようでもあり。
延命処置、お見事です☆
こんな風に、お気に入りを、
大切に大事に育てていく感じって素敵です。
これでまた元気よく、ながーくそばにいてくれるといいですね。
そして、メータがとってもかわいい!です。
by knacke (2015-07-18 23:46)
☆ナツパパさん、どうもありがとうございます。
こういう作業も趣味の内、と思って楽しんでいるうちは良いのですが
自分で弄ることが出来ない機械だったら、もうさようなら...
なんてことになってしまうのかもしれませんね。
そういう意味では、今のデジタル機器は完全にお手上げです。
機械式○○、なんていう名前に魅かれてしまうのは、
そういうほのかな期待も何処かにあるのかもしれません。
by harry (2015-07-19 00:46)
☆ROさん、ほんとにそうですよね。
家だって家具だって、何でも自分でとりあえず修理して。
修理の出来ないようなものは手に入れない、というのも
立派な見識のような気がしてきました。うーむ。
by harry (2015-07-19 00:49)
☆maniさん、いらっしゃいませ。
そう、メーターパネルのシルバーが妙に軽い印象だったので
思い立って色を変えてみたら何やら精悍になったような気がしてます。
それにしてもSCARABEOくんは今見てもカッコいいですね。
ごく初期のROTAX版の125ccが246号線でとてつもなく速いのを見て
むむっ、これはいつか手に入れなければ!、と思ったのを覚えてます。
maniさんちのSCARABEOくんも細かい所に手を入れてもらって
幸せそうですよね。
では、真ん中取って猿橋辺りで...(笑 <轡
by harry (2015-07-19 00:56)
☆HIROさん、こんばんは。
'90年代のCAGIVAは妙に勢いづいていて、
今思うと、あれは何だったんだろう(笑)という感じですね。
本当に、動く機械を手に入れても全く動かさない人もいるし
そういう出物を見つけられた時の小さな喜びはいいものですね。
自分も時々'70-'80年代のホンダ製小排気量が欲しくなります...
by harry (2015-07-19 01:01)
☆knackeさん、どーもありがとー。
はい、ある意味ではワタクシの分身でもあります。ほんとに。
なんだか無下に扱えないというか。ぁ、分身だからだったのか(笑
オートバイって進歩もしているんだけど、実際に出来ること自体は
ここ何年か大して変わっていないとも言えたりして。
歳を取ったということなのか、大人になったということなのか
その辺の分別が多少は付くようになってきたのかも(笑
自分のそばに居て思い出のある機械を、
今まで以上に大事にしてみようと思ってます。
メーター、ちょっとヒョウタンみたいでしょ。
by harry (2015-07-19 01:06)
カジバといえばナビゲーターなんて好きだったんですけどねぇ。
今見直してみたら、かなりTDM900的なんでびっくり。
ところで仔犬君の足回りの消耗はどうですか?
うちのDトラはいろいろ考えつつもまた自賠責を2年払ってバッテリーを替え、
ブレーキパッドも買っておいたんですが、ちゃんと乗るならサスのOHと
タイヤ交換が課題となってます。
それなりにお金が掛かる部分だけに、悩ましい…。
by YASH (2015-07-19 21:10)
☆YASHさん、Navigatorってなんとなく形を見たことがあるだけ
だったんだけど、ほんとにTDM的ですねぇ。
今流行りのクロスオーバー・モデルのようでもあり、確かに良いなぁ。
そう、足回りね。
仔犬号は幸い元々バネだけみたいなサスなので、あまりへたった感じ
も無いんだけど、調べたらFフォークにはちゃんとオイルが入ってる
みたいで、近いうちに一度交換してみたいと思ってます。
なんでも片側90ccだけらしくて、ドロドロなんじゃないかと...
でもね、そういう課題があるっているのは、ある意味、生きる目標
があるということでもあり(笑)、いいことなんじゃないかな、と。
by harry (2015-07-20 00:04)