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限界は低くてもいい。 [のりものいろいろ]

New Year's Fuji Scheme.jpg
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前回少し触れた、3月中旬に伊豆でオートバイに乗ってきた話を書くつもりだった。
走っていて楽しかったのは確かなのだけれども、何が自分にとって楽しかったのかを考えているうちに
だんだん考えることが膨らんできてしまって、よくわからなくなってきた。

魅力的な新しいマシンの話は仕事のBlogに書くことにして、
今回は考えたことを日記代わりに書いておこうと思う。

☆☆☆



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ワタクシの職場で扱っているBMW製品は、なかなかよくできたものが多いと思う。
個人的な嗜好は別にして、毎回新しい製品に触れる度に
開発テストにしっかり時間をとったのだろうと思われる丁寧な造り込みや
新技術に積極的に取り組む姿勢、明確な提案の盛り込まれた商品のコンセプトなどに
感心こそすれ、がっかりさせられることはほとんど無い。
今年の春は、彼らが生み出した新製品ーしかも主力商品といっていいマシンが立て続けに発表される
ということもあって、試乗を含んで事前に新商品に触れる機会があったということなのだ。

結論から言うと、今回触れた新しいマシンはどれも大変良くできていた。
R1200RT、S1000R、そしてR nine T。
どのマシンも独自の楽しさがあり、気に入った人にとっては手に入れて損はないと断言できる。
物を販売するという仕事をしていて、迷うことなくお奨めできる商品に出会うというのは
ある意味ではとても幸運なことなのかもしれない、とも思う。



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今回は、ジャンルの異なる新型車3車種のそれぞれの特徴をより明確に体感するために
競合他社のマシンにも同時に乗ることができるようになっていた。
そこで感じたのは、他社製品の中には現役のマシンであっても
「ある程度のペース以上になるとハンドリングの癖やパワー特性のせいで
 乗っていても楽しくない・怖いと感じるマシンがある」ということだった。
例えば、カーブへの進入で思ったように車体の倒し込みがスムーズにできず
曲がり始めるのを拒むような癖のあるマシンもあった。
これが「遅い」とか、「姿勢変化が大きくて不安定だ」などというものなら
それはそれで自分で何とか消化できることもある。
でも「曲がろうとしてくれない」とか
「思った通りのラインを進むことができない」いうのはかなり不快だ。


そんなことを考えながら、少し意地悪な目で複数のメーカーの製品に乗り比べてみた後に
BMWのマシンに戻ってみると、それらのハンドリングはどれも基本的にとても素直で
不快に感じるような癖がほとんど無いことにあらためて気がついた。
これは、以前にスーパー・スポーツS1000RRをサーキットで試乗した時にも感じたこと。
ワタクシののんびりした速度であっても、CBR1000RRやR1といった対抗車種は
それなりに体重移動を意識しないと曲がり辛いと感じる場面があり、
その点ではS1000RRの方が数段素直だったのだ。
おそらく、そういった違和感を感じさせる要素を、
開発中の走行テストなどを通じてきちんと潰してから商品として発表するというのが、
今のBMWのスタンスなのだろうと想像する。


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もちろん、乗り比べた他社製品も皆がBMWの引き立て役ばかりだったわけではない。
例えば川崎のW800。
1200ccの水平2気筒から乗り比べると400ccのマシンに乗り換えたかのような軽快さがあり、
アップライトかつコンパクトで視界の良いポジションで
それなりのハイペースでワインディングを駆け抜けていると、
軽量の少しクラシックなスポーツ・カーを駆っているような心地よい爽快感があった。
このマシンもハンドリング自体には気になる癖は無い。
どちらかというと、こういう比較テストでは淡白に感じられて記憶に残り難いマシンかもしれない。
それでも、インジェクションで穏やかに回る温厚なだけのエンジンと思いこんでいたのが
間違いだったのかと思うような歯切れの良い鼓動があり、これ見よがしなほど分厚く張り出した
ニーグリップ・ラバーは実際に車体をバンクさせる時にきっかけを与えやすくしていて
こういう素性の良いマシンに手を入れながら楽しむのも、きっと愛着が湧いて楽しいだろうなあ
と思ったのだった。


☆☆☆


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最新の快適なツアラーは、自分の行動範囲自体も拡大してくれそうな魅力がある。
疲れは最小限に抑えてくれて、移動中に感じるストレスも最小限かもしれない。
より遠くへ移動すること自体を楽しみたい人には、留保無しでお勧めしたいと思う。

尖鋭的なスポーツ・マシンでワインディングを疾走する楽しさは、
他に代わりの無いものだろうとも思う。
S1000Rも(そして実はR nine Tも)十分に先鋭的なスポーツ・マシンとしての魅力に溢れている。

と同時に、オートバイは理屈に合わない趣味の乗り物でもある。
もっとずっと低い速度域で自分の限界を思い知らされながら
やせ我慢を楽しみつつ、景色や振動、メカニカル・ノイズの入り混じった世界を
身体全体で受け止めて楽しむような乗り方もある。
そういう楽しみ方をするのならば、極端なことを言えばマシンは何でも良い、ということになる。
それでも、先に書いたようなハンドリングや操縦性の違和感は出来れば最小限にしたい。

伊豆の帰り道に、自分のマシンにすぐにでも乗りたいと思ったのは
たまたま自分が気に入っていま所有しているマシンが、どれもそういう違和感や癖の無い
素性の素直なマシンだということを再確認しておきたかったからでもある。



0312青空。.jpg
流れの良い第二東名道路、小さなトヨタ・ラウムの運転席で色々なことを考えていた。
追い越し車線を静かに駆け抜けていく欧州車の中型セダンを眺めながら
ああいったクルマならば伊豆までの往復も数段楽なのかもしれないと思うと同時に
自分がああいうクルマを手に入れても心からリラックスして楽しむことは無いだろうとも思った。

クルマを運転する時に、今のワタクシに合った速度は確実に10年前よりも遅くなっていて
より速い速度で快適であることことよりも、車体の隅々までの大きさをしっかり把握し切れる
コンパクトさや、閉塞感に襲われることの無い適度に開放的な室内空間の方が今は大事なのだ。

そんな遅めの速度域であっても、運転の楽しさは様々な形で現れるということを最近感じている。
思った通りの距離で滑らかに止まることができるかどうか、とか
タイアのたわむ状態を想像しながら、いかに車体を揺らさずに小さな軌跡でカーブを曲がれるか
なんていうことを考えながら移動しているだけでも、十分に運転は楽しい。

さて、いよいよ自分のマシンを引きずり出さなくちゃ...と。

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コメント 12

ナツパパ

バイクのことをコメントするには知識も経験も少ないナツパパです。
最後の段落で、車のお話を読んでいて、うんうんそうそう、と頷いております。
わたしも、個性的な車よりも、素直でリラックスしつつ運転できる車が良いなあ。
というわけで、10年乗ったフィットからトヨタのラクティスになったところです。
この車も、素直で運転しやすく、満足しています。
by ナツパパ (2014-04-04 17:30) 

knacke

車もバイクもいろんな楽しみ方ができますね。
年齢や暮らし、考え方が変わるとともに、
新しいつきあい方や乗り方、選び方までいろいろ変わるのって、
ちょっと素敵だな、って思いました。
お家も乗り物も生き物ですね。
これからもずっと楽しめそうですね、羨ましいです♪
by knacke (2014-04-04 18:37) 

うえいぱうわ

癖のある機械において、楽しめる癖と、逆に楽しめない癖を
感じる事があります。
まあそこらは人によっても様々かもしれないですが。
最近、多少経験値が上がってきたのか?単に年を取ったせい
なのか、絶対性能より自身が楽しいと感じる感覚性能の方を
重視するようになってきました(笑)
by うえいぱうわ (2014-04-04 18:41) 

HIRO

こんにちは。
製品の作り込みは、大事ですね。
自分も最初のマシンから徐々に排気量を上げたり、経験値を積んで行くと、自分の好みや方向性が見えて来たり(笑)
とはいえ、職場の若い後輩(免許取りたて、250ccの国産アメリカンタイプ所有)とかみたいに、「速さとかは、必要も興味も無い(結局ファッション命??)」というのを聞くと「若いのに(色々な可能性があるのに)勿体無いなぁ」と思ったり(爆)

製品は”素材”で、そこから自分の好みに替えて行くマシンもあれば、最初から出来過ぎているマシンもありますね。

by HIRO (2014-04-04 20:39) 

カズ−

最近は近所のKAWASAKI車のレストアの得意なバイク屋さんで
お世話になっていますが、初めて車検をお願いした時に私のF6
に乗って、「癖のないハンドリングで、切った方にすんなり曲が
ってくれるんですね~。」と驚いていました。
一方、癖のあるバイクをどう操るかを楽しむ人も当然いるわけで、
そういう人たちから見ると、「BMは歳をとってから乗るバイク」
となるようです。

by カズ− (2014-04-05 09:27) 

harry

☆ナツパパさん、こんばんは。
 乗り物の好みも歳と共に変わって来るものですね。
 考えてみると自分は若い頃も大きくて速くて重たいクルマには
 ほとんど興味が湧かなかったのですが、最近は以前にも増して
 「小さいクルマでないと自分で責任が持てそうもない」と思います。
 ラクティス、ちょうどラウムにも近い大きさですね。
 長さ4mに収まる位が、日本ではちょうど良いような気がします。
 よく「トヨタは個性がなくてつまらない」なんて言われますけど
 トヨタの目に見えない努力って凄いものがあると最近感じてます。

☆knackeさん、ほら、イタリア辺りの田舎で無精髭のおじさまが
 ちょっとオンボロの小型車に乗って何でも用事をこなしちゃうような
 そんなクルマとの過ごし方をしたいな、なんて思うのであります。
 そう、買って終わりじゃなくて、手を掛けて自分仕様にするのが
 機械とのお付き合いの楽しさだと思います。
 うちは夫婦揃って「自分でいじるの大好き」なので、助かってます(笑

by harry (2014-04-05 23:43) 

harry

☆うえいぱうわさん、確かに仰る通り、何が気になるかは人それぞれ
 ですよね。自分は乱暴に言うと「遅いのはOKだけど
 素直に曲がってくれないのはダメ」ですね。クルマだと
 「剛性感は不足気味でも気にしないけど、ダイレクト感が無いのは
 ダメ」とか。まあ、実際には毎回個別に違うんですけど(笑
 どういうものを自分が楽しいと感じるのか、真剣に考えるのは
 それ自体がとても楽しいことだと思ってます。

☆HIROさん、こんばんは。
 そう、いろいろ試して考えてみないと、本当に自分の求めているものが
 何かは、なかなかわからないような気がしますね。
 なんとなく若い人たちは乗り物に対して「まあ、これでいいや」的な
 諦めが感じられてしまって、ちょっと勿体無い感じがするというのは
 自分も同感です。他にもっと夢中になれるものがあるならいいけど。
 製品は素材、確かにそうですよね。出来過ぎ君は自分もちょっと苦手です。

by harry (2014-04-05 23:59) 

harry

☆カズーさん、ご無沙汰しています。
 そう、BMWって少なくともこの10年位の間のマシンは
 ハンドリングは素直なものがほとんどですよね。
 曲がらないマシンと格闘するのを一種の醍醐味と感じる見方も
 あって当然と思います。自分の好みとはまた違いますけれども...
 でも、素直な操縦性=年配者の平和な楽しみ、と枠にはめ込んで
 しまうのは、それはそれで勿体無い気がしますね。
 乗り物と向かい合う時にエネルギーを注ぐべきものは、人それぞれで
 構わないとは思うのですが...
 そういえばカズーさんのF6直系のG650GSの新車も、もう残りわずか
 になってしまいました。気に入ってくれそうな人に手に入れてもらって
 大事に永く楽しんでもらえたらいいな、と思ってます。
by harry (2014-04-06 00:07) 

FTドルフィン

僕がBMWを降りてから
ちょっと製品作りが方向転換した気がしますが
基本思想は変化ないんだと思います。

簡単に言ってしまうと
その昔、日本のメーカと同じ事してもダメだと
方向性を変えたことが
今のBMWの基礎になった気がします。
結果、日本のメーカがまねできない
思想を製品に織り込むことに
成功しているんだと。

いいとこばかりじゃないのは
何年もつき合ったので判っていますが
もういちどバイクに乗るなら
やっぱりBMWを選ぶと思います。

by FTドルフィン (2014-04-06 09:50) 

harry

☆FTドルフィンさん、BMWってある種の思想の塊のような感じがあって
 彼らの信念が色々な部分に色濃く現れているのが面白いところだと
 思いますね。機械製品を手に入れる時に、自分が惹かれるのは
 そういう「興味深い他人の思想」に触れられるかどうか、だったりします。
 日本のメーカーは自分達の思想を「押しつけてはいけない」という
 妙な遠慮のような、顔色伺いのような雰囲気がいつの間にか蔓延して
 しまって、はっとする新鮮さに欠けるような気がするんですよね。
 バイク・ブームの頃のHONDAのハチャメチャさが懐かしいな...
 なんて思ったりして(笑
by harry (2014-04-07 01:07) 

YASH

オートバイもクルマも、カメラなんかでも共通して感じるのは、
それを通して得られる楽しみや悦びって、カタログデータのような事より
自分で見つけ出す部分の方が大きいと思うんです。

経済でもそう思うんだけど、いい加減に右肩上がりの性能を追うんじゃなくて、
数字は大したことないんだけど肌で心地良さが感じ取れる、
そんなモノが増えるのを期待したいし、出来るだけ選びたいと思っています。
by YASH (2014-04-12 11:26) 

harry

☆YASHさん、相手が何であっても、お付き合いで大事なのは
 やっぱり理屈じゃなくて「相性」みたいなもの、ですよね。
 自分の身の周りに残っていて、それなりに愛着の湧いた機械は
 皆それぞれ自分と相性のいい何かを持っていてくれたのだと思います。

 そうそう、もう「半永久的な成長・発展が続くという幻想」から
 真面目に離れないとな、なんて思いますね。
 >数字は大したことないんだけど肌で心地良さが感じ取れる...
 そう、それでフジのXF1なんです。勿体無くてまだ開けてないけど(笑

by harry (2014-04-12 22:03) 

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