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「部屋」という名のクルマに乗り換えた。 [クルマと私]

Nihon-kai scheme.jpg
1030もうすぐお別れ。.JPG
2010年の冬に我が家にやって来た5ドアの初代RAV4(1997年式)。
新しい家にもすっかり馴染んで、仕事場への足だけでなく
木材や園芸資材を運んだりするような休日の用事にも重宝して、とても気に入っていた。
走行距離はちょうど7万kmを越えたところで、機械的な不具合はほとんどない。
難点があるとすれば、常時4輪駆動の宿命か、燃費があまり良くないことぐらい。
我が家に来てから、4年弱で約4.2万kmを走ったことになる。
去年の夏にタイアも替えたばかりで、その新しいミシュラン製タイアの乗り味は
まるでクルマが若返ったかのようで、乗ること自体が楽しいと思えるほど。

この冬を迎えるにあたって、その前の3ドアから引き継いでいたスタッドレス・タイアを
そろそろ新しいものに替えようかと思っていた。来年の12月には車検も控えている。
すっかり古くなっているホイールごと替えてしまおうかと価格を調べてみると
状態のそこそこ良さそうな4輪セットの中古品で4万円台位で手に入ることがわかった。

オートバイと比べるとクルマのタイアって安いんだなぁ、と思いつつ
ふと、もっと小さなタイアにできたら、さらに安いのだろうとも思った。
このクルマのタイアは215/70-16インチ。それなりに大径で重たいのだ。
大きめの段差を乗り越える時に感じる、重たいものがドタドタと暴れている感じは
このクルマのちょっと気になるところだった。


1030むむ....JPG
元々、走行距離の割には格安の車両を見つけて手に入れたので
実用の道具と割り切って、ピカピカに磨きあげようと思ったことはない。
それでも適度に綺麗にして乗っていたいとは思っていたけれども
つい最近、ショッピングセンターの駐車場で見知らぬクルマにドアをぶつけられて
かなり目立つ凹みが出来てしまったのは、あまり気分が良くなかった。

実家の母が転んでしまい、怪我こそなかったもののちょっと元気がないというのも、この秋の話。
日頃からよく歩いて自転車にも時々乗っている様子に、特に心配もしていなかったのだけれども
話してみると、体力が無くなっていることを切実に感じたらしく、それで元気がないのだった。

いざという時に母を楽に乗せて移動できるクルマがあると、少しは安心なのではないか...
そんなことも考えるようになった。
今のRAV4は5ドアだけれども、車体が長くなった分は荷台が拡大したのであって
後部座席がやや窮屈なことは3ドア時代とさほど変わらないのだ。

乗り降りのしやすい後部座席と、雑多なものもそれなりに積める荷物室があって
外寸は今のRAV4と同程度かもう少しコンパクトで、タイアはもっと小さく。
今のRAV4がそれなりの金額で買い取ってもらえたとしたら、
最小限の予算で手に入る、少し古いクルマを探してみようかな。

そんな風に考え始めて、すぐに思い浮かんだのはトヨタの「ラウム」というクルマだった。


Raumカタログから1.png
Raumカタログから4.png
▲トヨタの当時のカタログから


トヨタという会社は、思い切った真面目一徹のクルマを時々突然出してきたりして
もしかすると普段売れ筋のクルマを大量に造っていることへの
罪悪感でもあるのだろうかと、変に勘ぐってしまいそうになる。

「ラウム」という不思議な語感の言葉、ドイツ語で「部屋、空間」という意味なのだそうだ。
ほぼ4mちょうどという車体の長さは、今までのRAV4とほとんど同じ。
おそらく室内は工夫されていてずっと広く、何より後部座席へはスライド・ドアでアクセスできる。
形も一種の理想主義的な潔さがあって、発売された当時から興味のあるクルマだった。

腰を落ちつけて、走行距離の割に車両価格の安いものを探してみると
数日のうちに良さそうなものが見つかった。
2000年式、1.6万kmしか走っておらず、奈良県にあるという。
シルバー系がやたらと多い中にあって、珍しい紺色。我が家好みだ。

同時にRAV4も買取専門の業者を複数当たって
現車を丁寧に身に来て相談に乗ってくれた業者に買い取ってもらうことにした。
普段はあまり気にしていなかった室内の隅々まで出来るだけ綺麗にして、手放す事情も正直に話し
結果的には新しく手に入れたいと思っているクルマの本体価格とほぼ同額になった。
これなら一種の物々交換のようなものだ。


1030綺麗にしてお別れ。.JPG

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「もう雪道に行っても『突っ込めーっ!』って遊べないね...」
妻が少し寂しそうに言う(笑

引越しをして住む場所が落ち着くまでのこの2年間は、
本当にこのクルマがあって助かることばかりだった。
最後のお別れの時が一番綺麗、というのもなんだか可笑しな気がしたけれども
引き渡す直前はちょっと新車のような見栄えだった。
元気でね。


☆☆☆


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能登まで出掛けた翌日、職場で休みをもう一日取って列車を乗り継ぎ、奈良まで。
名古屋・京都を通ってなんだかんだで4時間以上の長旅。

訪ねた店先には、思った通りちょっとどんくさい雰囲気の
こじんまりとしたクルマが停まっていた。
あまり使われずに時間だけが経ってしまった乗り物特有の
「もっと働きたかったのに...」という覇気の無い感じがある。
大丈夫、ワタクシがこれからしっかり使ってあげるからね。

このクルマのドアにはちょっとした工夫があって、蝶番が少し傾いて取り付けられてあり
こんな風に前方に傾きながら大きく開いて乗り降りしやすいようにできている。
シート座面の高さも一般的なコンパクト・カーよりは高めに設定してあって
屋根の高さは立体駐車場に入るぎりぎりの1535mmで収めてある。

手続きを済ませて店を出て、最初に目についたガソリン・スタンドで給油してから
淡々と高速道路を乗り継いで我が家まで。
走り出してすぐ、足元が少し頼りない感触なのが気になったけれども
その原因はかなり時間の経った古いタイアのせいのようだった。
ステアリングは軽く、ボディは意外に剛性感がしっかりとしていて
レンタカーの小型車を借りる時に感じるような華奢な印象とは雰囲気が随分違う。
シートの形状とクッションのしっかりした硬さはRAV4よりもずっと具合が良く、
操作系の軽さのおかげもあって、1.5リットルのエンジンでも力不足という印象は無かった。
約350km、5時間強のドライブは思った以上に快適で、
翌朝には自分でも意外なほど疲れも残っておらず、これは良い買い物だったと思った。



1120秋晴れでした。.JPG
戻った翌日に早速車検整備に出し、溝だけはしっかり残っていたけれども
サイド・ウォールに無数にひびが出ていた古いタイアを処分して、
同時進行で手に入れておいた状態の良い中古品のホイールとスタッドレス・タイアに履き替えた。
数日後にはナンバーも付いて、保険も書き替えて、無事終了。
奈良を出る時にエンジン・オイルも換えておいたし、室内や車体もそれなりに綺麗にすると
初対面の時からは見違えて元気そうな表情になった。

無塗装の黒い樹脂製のプロテクターが全周に回っている辺りは
ルノーやプジョーの大衆車を思わせる質実な雰囲気があって、個人的にはとても好みだ。
ドア・ハンドルも同じ無塗装の黒い樹脂製。こういう部品に塗装やメッキは似合わないと思う。

中古品のホイールにはほとんど目立つ傷が無く、スタッドレス・タイアの溝も十分。
前輪の空気圧を少し高めにすると、軽快で自然な操作感になった。
価格はRAV4用に検討していた同じような美品の中古セットの約半額で済んだ。

今回、乗り換えるにあたって車両本体の購入金額と手放した車両の買取価格はほぼ同額、
正確には奈良までの片道の交通費が出るくらいRAV4の買取価格の方が高かった。
車検整備や名義変更などの諸経費は、来年の予定だったRAV4の車検が前倒しになったと思えば
それもほぼ同額。もともと買替えようと思っていた冬用のタイア代はほぼ半額で済んでいるから
総額での出費は本当に最小限で済んだと思う。


☆☆☆


1993 Toyota Raum II.jpg
この強烈に格好の悪いクルマは1993年のモーターショーに出品された
「RAUMⅡ」というコンセプト・モデル。
室内空間の広さと乗り降りのしやすさを追求して、左右のドアはスライド式という提案だった。


Raumカタログから5.jpg
▲トヨタの当時のカタログから

この発想が我が家にやって来た初代ラウムで現実化し、その後のPorteというクルマに引き継がれている。


TOYOTA JPN Taxi Concept.jpg
そして20年後の今年、今開催されている東京モーターショーに展示されている
トヨタの「JPN TAXI Concept」というモデル。
5ナンバーの枠に収まる適度にコンパクトな大きさに、
タクシーとして最適化された室内空間を持たせて、乗り降りのしやすさも考慮しているという。
これはまさに「ちょっと膨らんだラウム」ではないですか。ふむふむ。



☆☆☆



1114納まった。.jpg
ふと乗り換えを思い立ってから2週間と少し。
まるで以前からそこに居たように我が家の庭先に収まっている。
年末年始に実家まで出掛けた時には、母を乗せて少し移動してみようかな、とも思っている。

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FTドルフィン

チェロキーからフィットに乗り換えて
10年10万キロ
GSでディーラーに乗り付けて
営業の人に
「車の方が安いですね」って皮肉られました(笑
全国的な日本の道路事情は
小さい車に最適化されていて
撮影のこと(とめる事)を考えると
もう大きな車には乗れないなぁ・・・なんて思ってます
でも、実は夢もあって
カニ目を手に入れたい!!
まぁ、今は夢ですけど・・・

by FTドルフィン (2013-11-27 06:57) 

RO

おお良い買い物でしたね!
今は車いす可能なものも市販されてますが
ちょっと前まではとても高額で施設とか
送迎サービスにしか買えない物でした。
これからもお母様をおだいじに。。。

と、下の画像認証...abcdefg て
普通すぎ(-∀ー#)
by RO (2013-11-27 15:52) 

harry

☆FTドルフィンさん、大きいクルマに戻れないという気持ち、
 とてもよくわかります。日本はそういう風にできてないんですよね。
 年々、身軽になりたいという気持ちが強くなってきました。

 ライトウェイト・スポーツという世界は自分も憧れてしまいます。
 カニ目、いいですねー。自分も今住んでいる街で見かけた
 ライトグレーのMGミジェットがあまりにも素敵で可愛くて、
 あのくらいの小ささなら自分で整備しながら乗れるかな...
 なんて思ったことがあるんです。
 いつか、手に入れてください!

☆ROさん、ありがとうございます。
 ラウムにも車椅子乗車用の設定があったようで、そういう仕様の
 中古車もごくわずかですが売りに出ていました。
 いずれ誰もが歳をとって普通にクルマに乗るのにも苦労するように
 なってしまうのでしょうけれども、その辺に考慮した製品は
 意外に少ないみたいですね。

 画像認証、ちょっと変えてみました(笑

by harry (2013-11-27 18:42) 

辰

こんばんは、またまた良い買い物をされた感じですね^^)
ラウムは私も候補に上がった車です。
この時期のリアフォルムと、横開きは、すごく魅力的で、
検討していたのを憶えてます。ただ、家族が5人だったので
シエンタに落ち着いた感じですね、、
それと、驚きなのはRAV4のリセールバリュでしょう、、素晴らしい。
まぁ、、とにかくご購入おめでとうございます。長く付き合えるくるまですね、^^)
by (2013-11-28 00:08) 

POWERED

お優しい(^^)
スライドドアはやはり人に優しいんでしょうね。
トヨタは変わったクルマを時々出してくるメーカーですけど、
フリードの7人乗りほど欲張らず、奇抜さもなく、でも他にないコンセプトで。
良いクルマに出会いましたね!
ご安全に!
by POWERED (2013-11-28 01:38) 

harry

☆辰さん、ありがとうございます。
 このお尻の丸い感じもなかなかいいんですよね。我が家は基本的に
 二人+荷物なので、このくらいの大きさでも十分でした。
 RAV4の5ドアを選んだ時に、海外ではいまだにかなりの人気なのだと
 聞いて、もし手放す時にもそれなりの値段になればいいなとは
 思っていたんですが、期待以上にいいお値段になりました。
 トヨタのクルマって、見えない所まで良く考えてあるなぁと
 今になって感心しています。

☆POWEREDさん、本当は今も欧州車の小型のモデルに乗って
 淡々とドライブにでも出掛けたいなぁ...と思ったりもするんですけど
 通勤にほぼ毎日使うようになって、細かな故障が心配になって
 しまうようになりました。実用車としては日本車は実によく
 出来てますしね。
 その点、オートバイという全く別の趣味に徹した乗り物があるので
 クルマに期待するものが以前とは違ってきたのだと感じてます。
 それでも、このラウムというクルマには「売れるクルマを造りたい」
 というのではないエンジニアの思想のようなものが色濃く出ている
 ように思えて、面白いなあと思いました。
 スピード出さなくても楽しい事っていろいろあるんですよね。
by harry (2013-11-29 21:09) 

Nori

私の印象では、トヨタの作るものは実用一辺倒で突出したものがないという感じです。
何にしても、目的にあった車を得られたら、それが一番いいことのように思います。
オプティトロンメータは、ライト点灯を忘れがちですのでお気をつけて。
by Nori (2013-11-29 23:49) 

harry

☆Noriさん、自分もそんなふうに感じていたんですけど
 トヨタって不思議な底力があるなぁと思うようになりました。
 売っている強みをよくわかっていて、時々思い切った商品を出すところとか。
 失敗した時の怖さを考えると、他のメーカーには手を出しにくい分野に
 頑張って挑戦しているような気もします。
 オプティトロン・メーター、ライト点灯するとちゃんと減光したりして
 なかなか芸が細かいんですよね。面白いです。
by harry (2013-11-30 08:07) 

木菟

お久しぶりです。お元気ですか?
自分もこういうベーシックの車で、特に5ナンバー車が好きなんですが、最近は一応カタログには乗ってますけどみたいな扱いで残念に思っています。むしろ商用車をソリッド色でカラフルにしたら楽しそうとさえ思います。鉄チンホイール剥き出しで。(笑
自動車ショーとかでは隅に追いやられていそうな、ユーティリティー発想的なものは、発表当初は地味ですが、意外とコンセプトが継承されてあたりまえ装備になってたりするもんですね。妄想では、きっとベテランチームが工場の隅であれこれやってそうな気がします。(笑

by 木菟 (2013-11-30 11:47) 

YASH

ふむふむ、となりのニコちゃんとも馴染んでいるし、
良さそうではないですか。
TAXIのコンセプトモデルは、ニューヨークのタクシーに採用された
日産のNV200をかなり意識している、と見ましたよ。
同業の知り合いが乗ってますが、長尺が乗らない事以外は
なかなか良さそうでした。
とちらにせよ、車を暮らしの道具として考えた場合、こういうコンセプトが
ひとつの理想形なんでしょうね。

実はデミオを買うときに、お互いの両親を乗せることを考えて
プレマシーも考えたんだけど、側面の無駄なプレスラインがどうしても
イヤだったのを思い出しました。
縦長テールの最終モデルの頃だったら、そっちにしていたかも。
by YASH (2013-11-30 21:15) 

harry

☆木菟さん、ご無沙汰しています。元気ですよ。
 そちらはいかがですか?

 自分も3ナンバーのクルマにはちょっと乗る気がしなくなりました。
 車内の幅なんて、工夫次第で軽でも広いと思うくらいですしね。
 欧州車のようなソリッドで綺麗な色が少ないのは確かに残念ですね。
 いまだに昔乗ってたルノー5(2代目)鉄ホイール付、なんてのが
 自分にとってはクルマの基本のような気分でいます。

 仰るように、自動車メーカーの何処か片隅で地道にクルマの使い勝手を
 良くすることを追求している人達がいるような気がしますね。
 トヨタって裾野が広そうなので、たまにそういう人たちの蓄積が
 突然形になって出てきそうで、面白い会社だなぁと最近思ってます。

☆YASHさん、そうニコちゃんとほぼ高さは一緒なんです。
 NV200がTAXIで採用という話は自分もネットで見ましたけれども
 確かにまっとうな選択という感じですね。
 知り合いの方で放射能汚染に備えてNV200を買ったという方もいたりして。
 中で暮らせる空間もあるちゃんと走るクルマという基準らしいです。

 自分もここ1、2年に発表された車のいくつかは無駄なプレス・ライン
 が気になって駄目ですね。
 クルマって、フォルム自体で勝負!という意気込みが無いと
 陳腐化しちゃうのも早いんじゃないかと勝手に心配してます。
 マツダの現行車種ではなぜかベリーサが好きなんですよ。
 あのちょっと鈍臭い感じ、今では貴重な佇まいですね。
 あれがスライド・ドアだったらな...なんて。
by harry (2013-12-01 00:22) 

ナツパパ

我が家のフィットも来年は9年目で、車検なんです。
85歳になった母のことを考えると、こういう車は魅力的です。
この年末、考えてみようかな。
by ナツパパ (2013-12-15 09:17) 

harry

☆ナツパパさん、こんばんは。
 自分もつい最近まで「自分の親が楽に乗り降りできるかどうか」
 なんてことは考えもしなかったのでした。
 我が家の場合、新車に乗り換えというのは考えづらいのですが
 今の日本は中古車も豊富にあって、選択肢には困らないような
 気がします。このラウムというクルマ、自分でも一休みする時に
 後部座席に座ると、とてもゆったりとした造りでのんびりできて
 なかなかいい気分ですよ。
 
by harry (2013-12-15 22:02) 

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