空気遠近法のない世界。 [Infrared Photography]
今日の夕焼け。
アルプスに沈んでいく夕日を右手に見ながら東南の方角に目を向けると
19時過ぎに一瞬空全体がぽっと燃え立つような色に染まった。
蔦の絡まる古い社屋も、今年の秋にはなくなっているだろう。
ドアの蝶番の隙間までツルが忍び込んできて、そんなところにも時間の重みを感じたりして。
もう一つのカメラでも撮ってみる。
うっすらと「もや」が掛かったように見えていた空が、すっかり別物に見える。
しっとりと柔らかく見えていたのは、可視光線の屈折の重なり合いだったということか。
おぼろげに見えていた月も、妙にくっきり。
「空気遠近法」という古典的な風景画の技法がある。
遠くの景色は空気の層に通して霞んで見えるので
意識的にそのぼやけた像を描くことができれば、
現実の目で見た時に感じる遠近感を平面的な絵画の上でも表現できる。
赤外線写真では、その「空気遠近法」の効果自体がほとんど消えてしまう。
距離を隔てた景色をもわっと見せていた原因の「波長の短い可視光線の錯乱」が
写真に残らないからだ。
肉眼ではぼんやりとしか見えない遠くの山々の
鋭角的な襞がくっきりと見えている様は、なんだかとても非現実的。
むわっとした蒸し暑い午後だったのに、この澄んだような空気。
本当の世界は、実は見慣れた景色とは少し違っているのかもしれない...なんて考えてしまったりする。
2010-06-22 00:07
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コメント(5)
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本当の世界は、どこにもナイかもしれないねぇ。
すべては幻想。
昨日も今も、明日もこれからも。(´ー`)
by きむたこ (2010-06-22 15:25)
同じ夕景でも全然異なる印象になるんですね。
色がある方は情緒というフィルターがかかりますけど、
二枚目の方が断然冷徹に現実を映し出しているように見えます。
まさしくCold Landscape.
飛行機から見る、雲の上の夕焼けなんて撮りたくなってるでしょ(笑)
そういう出張はないんですか?
by YASH (2010-06-23 23:24)
☆きむたこさん、吉本隆明?(笑
でもね、たまにほんとにそういう気分になるな、僕も。
ほんとに中米で暮らしてたんだったっけ...なんて。嘘みたい。
その頃に聴いてた音楽を久々に聴いて、不思議な気分に浸っております。
☆YASHさん、なかなか不思議で良いでしょ。
「情緒というフィルター」なんて、カッコいい表現ですね。
でも、まさにそんな感じ。すっかり赤外線写真の魅力に浸ってます。
飛行機の窓からの眺め、うーんいいなぁ。撮ってみたい(笑
なんだかね、とんと海外にご縁がないんですよ。最近。
新婚旅行は2回は無いし...お金貯めます(微笑
by harry (2010-06-26 22:26)
赤外線写真に写る旧社屋は、
背景効果余りあって、ホーンテッドマンション
みたいに見えますね(笑
1周忌に敬意を表して?マイケル・ジャクソンの
スリラーをBGMに流しますかねぇ (^∀^
by MORIHANA (2010-06-27 11:15)
☆MORIHANAさん、たしかにそんな感じですねぇ。
見たこともない生き物が棲んでそう。
スリラーのプロモーション・ビデオ、最初に見た時は
まじめにマイケルが変身しちゃうところが怖くてね(笑
ポップ・スターがこんなものも作るんだ、
と妙に感動したのを思い出しちゃった。
by harry (2010-07-07 22:06)