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区切りと足跡。 [仕事と私]

抱えていた仕事の一つ、新規に開く店がなんとか立ち上がった。
準備と仕込みがひと月半、工事が約2週間。まったくのドンガラの建築物件に店舗を造りこむには、貰った時間があまりにも少なくて、本当にできるのだろうかと自分でも思ったりした。
でも、やるのだ。それが私の仕事だから。

私の会社で、工事や設計なんていうことに関わっているのは実質私だけで
他のスタッフは商品企画や、営業・販売や、広報などの世界に関わっている。
一種のオーナー企業なので、創業者家族の「夢」や「思い」を形にして売るのが我々の仕事なのだ。
夢や思いはそのままでは商品にはならないので、現場の人間が商品の形に持っていく。
そんななかで、いわゆる小売ベースに乗らない、建物とか店舗とか庭園施設なんていうものを形にするのが私の仕事だ。エネルギーを消耗するけれども、やっただけの結果が形になって残る。
それが私の心の支えなのだと思う。自分がしたことの足跡が、くっきりと残ってしまう。

オーナー家族は漠然とした夢を語る。
今度の店は、こんな感じにしたいわ....あれも欲しい、こんな色も素敵よね...云々。
私は自分の頭の中で少しずつイメージを組み立てていく。営業部隊からの要望も聞きながら、工事費や何やらの折り合いをつけ、制約の中で工夫を盛り込もうとする。少しずつイメージを微調整して、より現実的にそこで販売が始まっている様子を想像しながら、細かなディティールを詰めていく。
ある時点からは、もう私の店なのだ。
そんなつもりでやらなければ、気持ちも集中できないし、いいものにはならないように思う。
まして、一緒に力を貸してくれる外部の業者や職人達をその気にさせることなんかできない。

職人さん達と話しながら、ものが出来ていく過程を眺めるのは楽しい。
電気屋には電気屋しか知らない領域があり、左官屋さんには左官屋さんからしか聞けない話がある。
私は一人一人の職人さん達と細かく話す方だと思う。興味もあるし、何より「どんなつもりでこの仕事を頼んでいるか」をわかってもらいたいと思うからだ。迷惑かもしれないけれども、我々の会社が何をしているのか、今回の店をどういうものにしたいのか、コーヒーを差入れながら、話す。
そのうち、職人さんからも「本当はこう収めたいけれども、こういう問題があるので、こうしてもいいか?」「こうしろって言われたけど、こうした方が良いと思うけど、どうか?」なんて話が出てくる。できない理由や変えた方がいい理由を聞いて、代案を二人で考える。納得して、仕様を変更する。そうして結果がよくなることも多かったりする。
私はほとんどすべての分野の素人だけれども、どの分野の人とも話をして理解できるようになりたい、と思う。




工事が始まってから、きっちり2週間後。
翌日のプレオープンを前にした誰もいない夜の店内で、飾り付けの終わった店を眺めてみる。
ほぼなんとかイメージどおりにできたんじゃないだろうか。
英国製の古い壁積用煉瓦を積んだ柱周りには、屋外の煉瓦壁と同じように釘を打ち込んで飾付けをした。
寄せ集めの英国家具も、努めてさっぱりと仕上げた什器と一緒に馴染んでくれたかな。
あとは、他のスタッフに頑張って売ってもらうのだ。

プレオープン初日の土曜日、久々にネクタイを締めて、銀馬号で出掛けた。
天気は快晴。日頃の行いには気をつけないとね。
招待客の応対に舞い上がっているオーナー家族を遠目に見ながら、お世話になっている取引先の人とのんびりと話す。工事の関係の人も、にこにことやって来て、お土産に、と買物をしてくれる。
心底、一仕事終えられてよかったなあと思えてくる。

昨日も売り上げはよかったらしい。
家に帰ると、土曜日からの激しい頭痛から復活した相棒が「ぎんなん食べても、いいよ」だって(笑
24粒入りの袋から、10粒だけ暖めて、熱々をいただきました。
小さな幸せ。



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MORIHANA

しばらくの不在の理由が、コレだったのですね(^^
お疲れ様でした。…新婚ライフで浮かれてばかりいたわけじゃないんだよ
と、記事が、写真が雄弁に語っております。
公私共に充実して、これからもっと、いいお仕事がいっぱいできる
んじゃないかしら? がんばって、いい足跡をたくさん、あちこちに
残していってくださいね (*^^)v
まるこさん、生活環境の変化でたまった疲れが一気に出たのでは?
仕事も生活も一変ですものね。無理せず、ボチボチといきましょう。
どうぞ、お大事にね♪
by MORIHANA (2006-02-20 15:40) 

pon

去年拾ってきた銀杏がペットボトルの中でそのまま・・・
by pon (2006-02-20 15:42) 

D@NNA

よ〜〜〜くわかります。harryさんの気持ち。私も以前はそのオーナー
家族とやらの実体を経験しました。そして、何よりも現場を知る事の
大切さ!職人さんへのコーヒーの差し入れがいかに最後に効力をもつ物
なのか、、、、私も今はオーナー家族にバイバイしての1人仕事。
仕事はすべて段取り次第。その結果が自分に帰ってくる充実感。まさしく
それが仕事と言うものでしょう。でもなかなかその事を知ってる人は
少ないのが現状です。何でわからないんだろう?と思いつつも結果は
想像した通り。「だ・か・ら、、、」と心で思いつつもそれがまたまた
余分な仕事が増える事に、、、、(苦笑)世の中そんなもんですよね!
by D@NNA (2006-02-20 15:44) 

m-kurata

いい話ですね!! 
自分の仕事が形となって確実に残っていく・・・、素晴らしい仕事と思います。
「何のために仕事をするのか?」このあたりのことを理解できない(していない)大人が多いような気がします。(口では言っても、心の中では本当には信じていない人達)
このような大人達の姿・心を敏感にくみ取って育つと? 今の恐ろしい子供達になっていくような気がしてなりません。
 建築関係の職人さん達と沢山会う仕事を以前しておりましたが、話すと面白いことが、どんどんわき出してきますね! (私は職人さんが大好きです)
 最後の銀杏にホロリ・・・。小さくない、大きな幸せと思いますが?
by m-kurata (2006-02-20 17:08) 

tanuki

相棒さまの頭痛、もうすっかり大丈夫でしょうか?
私も頭痛持ちなので、辛いのがよくわかります。。。
どうぞお大事になさって下さいね!m(_ _)m
お仕事おつかれさまです!!
このように、だんだんと仕事の経過が形となってあらわれてくるのを見るのは、大変だけどすごく楽しいのではないかと思います。
職人さんとのコミュニケーションってとても重要なポイントですよね!!
harryさんも、職人さんたちにとって、頼れるポジションの方でいらっしゃるんでしょうね。
記事から充実した空気が伝わってきます♪(^o^)
by tanuki (2006-02-20 17:38) 

knacke

自分の思い描いた空間が実際に出来上がっていくのって、
ドキドキーのワクワク、楽しい時間ですね。
短い時間でこれだけの工事、おつかれさまでした。
現場管理、大変だったでしょうね。
お仕事の後の10粒の銀杏がおいしかっただろーなぁ。(笑)
2人の暮らし、少しは落ち着いたかなぁ・・・。
鳥を呼ぶならやっぱりエサが必要よ。
えさ台、希望します。
by knacke (2006-02-20 17:52) 

まき

創りあげていく、大変さと楽しさが伝わって来ました。作品が残っていくというのが、素敵ですね。出来上がったお店の人気とかも気になりますね。
by まき (2006-02-20 21:56) 

YASH

お疲れ様でした。
通しで工事に携わるのは大変ですが、やりがいもありますね。
私も施主さんから直接請負うこともあるので、お気持ち解ります。
でも下請けの場合だと、職人側の話は聞こうとしない元請けが多いです。
harryさんみたいな監督だと救われるんですが。
by YASH (2006-02-20 22:38) 

ブノワ。

harryさんへ。
おはようございます。お元気そうで何よりです。
今日の記事、読んでいて大変に羨ましく思いました。
どんな人でも、何かを作ってお給料を貰う訳です。
それは「作る」、「造る」、「創る」だったりと様々な訳だけど……。
こうして自分の仕事が形になって行くのは気持ちがいいでしょうね。
職人さんは、独自の世界観を持っている人が多いです。
会話をする事でより素晴しい「技術」を引き出せる……さすが!
僕もヘボだけど気質だけは職人です(笑)
会話の中で「ン?コイツなかなかやるじゃん」と思うと頑張れるもの。
お互いを認め、尊敬して初めて素晴しい物が出来るんでしょうね。
素敵な店ですね、いつか遊びに行ってみたいです。
最後に疑問が一つ。なぜ、銀杏が半分の12個じゃないの???(笑)
by ブノワ。 (2006-02-21 07:56) 

むくもく

現場管理って大変ですよね(昔してました)
やっぱり 職人さんと意思の疎通ができないとやりにくいです
コーヒーっていいきっかけになりますね
うちは なるべく 店舗の仕事は受けないよう工夫してます
大忙しになるのは目に見えてますから(笑)

おつかれさまでした
by むくもく (2006-02-21 10:25) 

boo-pee

一仕事終えた後の充実感の中で味わうぎんなんは格別でしょうね~。
お疲れ様でした。
百合ヶ丘の家具屋さんお店は小さいけど楽しいですよ!
オーナーも感じの良い方です。
先週もテーブルを予約してしまいました。ww
是非足を運んでみて下さい。
宜しければお付き合いしますよ~
by boo-pee (2006-02-21 19:15) 

chameko

お久しぶりです。
harryさんのお仕事が今更ながらわかりました。(笑)
それはやりがいのある素敵なお仕事ですねー。
最近、家を建てた私としてはそのようなお仕事をなさっている方には、職人さんを含め、ちょーリスペクトでございますよ。
そして、良いものを作るにはそのような方たちとどんなに仲良くすることが大切かということを知りました。
幸い心が通い合って、一丸となって作る喜びを味わえて幸せでしたよ。
人を幸せにしてあげられる仕事なんて素晴らしいですね。
ちなみに〜
相棒さんの「ぎんなん食べていいよ」っていうセリフ、なんかすごいわかる・・・
あれは争奪戦になる・・・
by chameko (2006-02-21 21:05) 

お客様の思いをお預かりして形にしてゆくとこって、とてもやり甲斐がありますよね。それを職人さんたちとシェアできる能力はharryさんの素晴らしいところだと思います。
僕の仕事も、形にこそなりませんが、お客様の思いが実績として現れますので非常に近いのですが、なかなか現場の皆さんとその思いをシェアし合って実績を出すのが難しい・・・・。まだまだ勉強の身です。
by (2006-02-23 12:45) 

harryさん、今晩は。お仕事忙しそうでお疲れさまです。でもなんか充実した感じがひしひしと伝わります。季節の変わり目、風邪などひかぬよう体調管理にもお気をつけて下さい。
by (2006-02-26 22:49) 

harry

うおぉ、重たい...
もう一週間経っちゃいました。久々にPCにじっくりにらめっこです。

☆MORIHANAさん、おかげさまで相棒は翌日以降復活しました。
 「ワタシのせいでブログを書けなくなったって思われてないかなあ...」なんて
 妙に気にしてましたが。
 2月はあっという間ですね。もうすぐ3月。木々の新芽も吹いてきて、もう春近
 しなのですね。嘘みたいだけど。。

☆ラスさん、なんてことを!もったいないーっ
 今すぐ持ってきてください(笑

☆D@NNAさんはバイバイして一匹狼になったのですね。カッコいいなあ。。
 ワタクシはまだ「自分が本当に何がしたいのか」、よくわかっていないのかもしれません。忙しさに甘えて、実は流されてるような気もしたりして。
 ま、まだまだ時間はあるような気もするので、もう少し頑張ってみますね。

☆m-kurataさん、今晩は。
 建築の世界でも、職人さんはいろんなことを知っていたり、一人一人独自の世界観を持っていたり、話しているだけでも刺激になることが多いですね。
 自分が飽きっぽくて広く浅く世界を眺めているのが好きなせいか、一つの事に数年、数十年と打ち込んでいる人を見ると訳も解らず感心してしまいます。いろんな種類の仕事の人と知り合うことができる、というのも今の仕事の気に入っているところなのです。幸せものですね、ワタクシは。

☆tanukiさーん、コメントを戴きっぱなしで、すみません。。
 相棒のことを気遣っていただいてありがとうございます。普段から肩が凝ったり頭がどんよりと重たかったりしがちな様子なんですけど、時々ヘビーな頭痛が襲ってくるみたいです。こういうのって辛いのでしょうね。
 ちょっと暖かくなってきたかな、なんて思ったけど、もう少しですね、バイクの季節までは。

☆きむたこさん、ちょっと疲れましたです。でも楽しかったなあ、ほんとに。
 でも、そちらもたいへんだったみたいで(笑)。あ、笑っちゃいけないか。。
 餌台ね!地味で古びてて、朽ち果ててるようなのを探してこようかなあ。
 で、カラスが大挙して遊びに来ちゃったりして...どうしよう。。
by harry (2006-02-27 23:26) 

harry

☆まきさん、今晩は。
 残っちゃう、って思うとかなり緊張するんですよね。それがまたいいんですけど。でももっと世間にはっきり見られてしまう仕事、例えばバイクを設計して自分の作品が街中を走ってるのをみられたら、どんなに楽しいだろう...なんて思ったりもしますね。売れなかったときのショックも大きそうですけど。。

☆YASHさん、今晩は。
 仕事って発注する方が上、なんてこともなくて、知恵や技術をお金で交換してもらってると思えば、お互い限りなく対等なはずなんですよね。もしかしたら「その技術と知恵、売ってくださいっ」ってこっちが頼んでたりして。
 ワタクシはいつも単純に「年上の人のほうが上」とだけ思ってしまいます。
by harry (2006-02-27 23:40) 

harry

☆ブノワ。さん、今晩は。
 ほんとに「話してみないと何も伝わらないんじゃないか」って、いつも僕は思ってます。仕事に限らず、友人関係でも、そうですよね。仕事だと、いきなり「黙ってても解るはずだ」、とか、「解らないやつはどうしようもない」、なんてなっちゃうことが多いような気がしますけど、人間基本は「話せばわかる」ですよね(笑)。
 でも、実はどこかで「誰とも一言も言葉を交わさず、自分の好きなことだけに無心に打ち込んで何かを造りたい」なんて思ったりもするのです。この先どんな仕事をすることになるのか、考えながら過ごして行こうと思っています。
 で、ぎんなんですけど(笑)。目分量で半分くらいかな...と拾ってみたら、それだけだったんです。控えめで謙虚な性格なんでしょうね、きっと(笑

☆むくもくさん、店舗って時間に縛られちゃうので、神経をすり減らしますね。
 でも、ショーなどで展示目的の庭を造る時なんかも時間との勝負ばかりなので、だんだんそういうのもスリルがあっていいなあ...なんて(苦笑
 でも、こういう神経の消耗する仕事は年に数回でもう十分ですね。疲れました。ハンター君でどこかに散歩に行きたいなあ。。

☆boo-peeさん、家具って眺めているだけでも楽しいものですね。ちなみにboo-peeさんは土曜・日曜がお休みですか?家具屋さん以外にも美味しいところとか教えてもらっちゃおうかな。。
 ちなみにうちの相棒は「バナナ弁当」にかなりのインパクトを受けてました(笑
by harry (2006-02-28 00:06) 

harry

☆茶眼子さん、今晩は。
 そちらにも遊びに行く時間が取れなくて、ちょっと寂しいんですけど。今度しっかり見に行きますからね!
 デザインの仕事から、家具屋でものを作るようになって、今の仕事まで、少しずつですけど世界が広くなって楽しくなってきました。でも、小さな物でも自分ひとりで突き詰めて完成させるって仕事も、いいですよね。考えてたことが形になるって、どんな仕事でも楽しいものなんでしょうね。
 家を造るっていうのは、そういうことの一つの集合体みたいなものでしょうから、やりがいもあったでしょうね。楽しかっただろうなあ。。
 ワタクシはもっと時間が経ってから、例の納屋のような家を建てる気でいるのです(笑)。そのころ、ブログなんてものはまだあるんだろうか。。

☆eddieさん、今晩は。
 他人と力をあわせて、っていうのが、以前は苦手だったんです。実は。
 個人的なことですけど、協力隊で訳のわからない環境で仕事をしたことが、今の自分にはとてつもなく助けになっているような気がしています。あれは、普通に日本にいて仕事をしていたら得られない経験でした。
 私はeddieさんのように「相手方の懐まで飛び込んでいって、成果をあげる」っていうことが、とてつもなく大変な仕事のような気がしています。自分達のための店を造るっていうのは、まだ自分を納得させれば済んでしまうところがありますから。日々努力、ですね。。

☆ohさん、今晩は。
 お気遣いありがとうございます!どういうわけか、身体は結構丈夫みたいです(笑)。夜中に帰って来ても、泡の出る飲み物が飲めれば幸せという便利な性格なもので...
 もうそろそろオートバイで出掛けるのが最高に気持ちのいい時期ですね。冬の海産物も楽しめて、暖かくて、途中で昼寝のできそうなところ...なんて、考えただけでわくわくしてきちゃいます。最近、何処か素敵な所、出かけてますか?
by harry (2006-02-28 00:28) 

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