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Blade Runnerの、ある一瞬。 [気になる光景]

Blade Runner、何回観たことだろう。
学生の頃、二番館のオールナイトで観て、ビデオでもDVDでも観た。
フィリップ・K・ディックの原作からは遠く離れているようにも思うけれども
あの映画の提示したイメージがいつまでも頭を離れることが無い。

「心」とは、人工的に作ることのできるものなのだろうか?
想い出も、記憶も、それがあなた自身の経験したものだと、誰もが100%信じられるだろうか。
人間の創ったものであるならば、仮に「心」を持っていても、
破壊することが(=殺してしまうことが)許されるのだろうか。
この秩序のない都市の構造は、さらに高く積み上げられて、
あのようにいつまでも雨に打たれているのだろうか...

自分は人間ではないのではないか、という思いにかられたレイチェル(ショーン・ヤング)が
デッカード(ハリソン・フォード)の部屋を訪ね、自分は子供の頃のことを覚えていると
切々と訴えた後、投げ捨てるように置いていった親子の写真。
レイチェルは、そこに写っている女の子が自分だと信じていたのだ。デッカードと出会うまでは。
落胆し絶望した彼女が置き去りにした写真をデッカードが取り上げる。

母と、庭先だろうか、木漏れ日の下で微笑む女の子....
一瞬、写真の中の木漏れ日が揺れるように動く。

劇場で観た時には、全く気が付かなかった。
ビデオで何回か観ているうちに、それでも最初は目の錯覚かと思った。
目を凝らして見てみると、確かにカットの切り替わる直前にそれは動いている。

写真が一瞬動き出すその映像を通じて、リドリー・スコットは何を伝えたかったのだろう?
彼女の心の中では、植えつけられた記憶と写真の風景は一体となって
動きのある物語として輝いているのだろう。
デッカードがレイチェルの心の中の風景に思いを寄せ、
彼の心が共振する瞬間、紙焼きの写真の中の風景も動き出す...ということかな。

『こんなことがあった」と信じている記憶も、レイチェルに与えられた写真のように
後から創り上げられたものなのかもしれないのだ。おそらく私たち自身によって。
そういう意味では、想い出などというものは限りなく不確実なものなのかもね。

でも、そんな不確実なものを、時に心のよりどころにしてワタクシは生きている。

☆☆☆

追記:10.25、23:00pm

この記事には自宅のTV画面を写した動画を掲載していましたが、
匿名の方から「著作権に配慮して削除すべき」という主旨のコメントをいただきました。
確かに不用意だったかもしれませんね。
もしこの記事で少しでも興味を持っていただいた人がいらっしゃったら
その一瞬を、是非観てみてください。
もちろん、そんな些細な一瞬だけがこの映画の見所ではないのですが。。



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コメント 15

へー八郎

毎度おおきに。
コメントさせて戴けておらず大変申し訳有りませんm(__)m
それにしても今夜のソネブロは重いですねぇー#ノ-_-)ノ ┴┴
さて、懐かしい映画ですねぇー。わたくしも非常に好きな作品です。いやあ久しぶりに観たいなぁf(^_^;)
by へー八郎 (2005-10-25 01:52) 

m-kurata

ブレード・ランナーはよい映画でしたね!
確か、最後の終わり方が2種類あったように記憶しています。
余韻を残して終わるのと、二人で暮らすことを暗示して終わるタイプ。
どちらも良いのですが。
 小説で(ブラッドベリーだったかなぁ・・・)、目を覚ますと荒涼とした惑星
の上で、他にカプセルで冷凍睡眠状態の人間が何万人と・・・。
 これが妙に心に残っています。
再度はっきりと思い出したのが、「マトリックス」の一作目でした。
同じ設定ですよね。  自分もひょっとしたら、目が覚めたら・・・・・?
by m-kurata (2005-10-25 07:45) 

ブノワ。

harryさんおはようございます。今考えてみると、この頃が、ハリソン・フォードの頂点でしたね。今は見る影もない……リドリー・スコットは着実にキャリアを伸ばしているのに。
記憶や想い出なんて、harryさんが言うように本当に不確か。昨日の事も覚束なくなって来た今日この頃(笑)人生まだ半分と、この先に思いを馳せ期待する一方、広大な宇宙の中で言えばほんの瞬きほどにもならない一生なので、これからは勝手に生きて行こうと今日の記事を読んで思いました。harryさん、ありがとう(笑)
by ブノワ。 (2005-10-25 08:06) 

むくもく

ブレードランナー 自分の中では5本の指に入る名作ですね
何回も見ました 
不確実な物って思い始めると、だんだん怖くなってました
ある時、自分が見ている物(色)はほんとに他人と同じように見えているんだろうか?
ってまじめに考えたことがありました (中学生ぐらいかな)
今なんか、不確実だらけで(笑)もう怖くありませんが・・(笑)
by むくもく (2005-10-25 09:09) 

MORIHANA

ブレードランナーは見ていません。
…最近、映画って見ていないなぁと、記事を見てシミジミ。
首下までの泥沼水位はようやく膝まで下がったものの、
年内は遠浅状態が続く見込み(-_-;)

ところで、harryさんの記事が動画になってから、ワタクシのPCでは
絵が見られませんの。…で、しきりにQuick Time Installerをインストール
せよとメッセージが出るのですが、インストールしても大丈夫(・・?
harryさんのスチール写真も結構好きなので、たまにはスチールも、ねっ。
by MORIHANA (2005-10-25 09:40) 

GS-XR

スローなバラードと、降りしきる酸性雨。
たまには後ろを振り返って、思い出に浸るにはいい時間。
足りないのは・・・美女と美酒ですが(笑)
ディレクターズカット版をとっても見たい今日この頃。
あと、誘導しちゃダメですよ(笑)
by GS-XR (2005-10-25 12:48) 

NO NAME

映画のキャプチャを取り込んで掲載するのはまずいんじゃないですか。映画が好きならもう少し著作権関係のことにも気を配った方がよろしいかと思いますよ。これは早々に削除すべきと思います。
by NO NAME (2005-10-25 19:59) 

harry

☆へーさま、今晩は。
 久々に是非、観てみてください。不思議と、間を空けてみると、また違った印象に
 なるんですよね。見るとしばらくは「寡黙」になれると思います(笑

☆m-kurataさん、いらっしゃいませ。
 ネットには驚くほどこの映画の情報が溢れていますけど、どうも公開当時の
 バージョンは監督の意向とは随分距離があったらしいですね。
 でも、ハッピーエンディングを望む北米市場向けに付け足したといわれる青空の
 風景が、2時間近く雨の降り注ぐ街を見た後には眩しくてほっとしたのも確かで。

 2019年はどんな風景になっているんでしょうね。
 野生の猫たちは相変わらず逞しく暮らしていそうですけど(笑

☆ブノワ。さん、今晩は。
 そうですね、こんなワタクシの人生がどう転ぼうと、大勢に変化はない
 ですね、全く。。
 うむ、ワタクシも気楽に行くことにします!ありがとうございました(笑

☆むくもくさん、色の見え方のこと、全く同じような思いにかられたことが
 ありますよ。
 ワタクシもだんだん「世界はすべて相対的なものだし、不確実だし...」
 と、すっかり楽天的になりつつあります(笑
 こういうのも、何かを学んだってことなのかなぁ。。

☆MORIHANAさん、上手く呼吸はできてますか??
 すっかり映画館から足が遠のいてしまいましたが、やっぱり大きなスクリーンで
 視界からはみ出る映像と音に包まれたいですね、たまには。
 たった2時間で、気分も考え方すらも変わってしまったりして。
 映画館で時間を使って、後悔したことはないですねぇ。
 QuickTimeはまっとうな害のないソフトなので、是非インストールしちゃって
 くださいな。バイクに乗った気分を、是非。

☆GSさん、ディレクターズカットってデッカードの独り言風ナレーションが無い
 んですけど、意外に寂しく感じることも無くひき込まれちゃいました。
 ワタクシは濃い目のアルコールさえあれば、一人で観るのが好きです。
 誘導って...バレたか(笑
by harry (2005-10-25 23:36) 

へー八郎

毎度おおきに。
寡黙目指して再度観てみたいと思いますf(^_^;)
うぅーむ、著作権・・・。
確かにねぇー、そりゃまぁそーなのかも知れませんがねぇ。全編とゆーことでも無いし・・・営利目的でも無いし・・・かと言って個人で楽しむケースでも無いような・・・。難しいですねぇ、著作権って。
by へー八郎 (2005-10-26 01:36) 

harry

あ、へーさま、再びどうも。
こういうことって難しいですね。正論ではあるし。どんな情況であっても正論を
振り回すのを好む、という人もいるし。
でも、へーさまをはじめ、何人かの方が「あ、懐かしいなあ、また観たいなあ」
と思っていただけたとしたら、この記事も浮かばれるというものです。
懲りずにまた、よろしく。
by harry (2005-10-26 23:09) 

おっと

いい映画ですよね。
でも、こういう大人なSF映画数が少ないですよね。作る方は作りたくてウズウズしてるはずだけど。
他に好きなのは「惑星ソラリス」「シャイニング」「デューン(だったけ?)」など。他におすすめありませんか?
by おっと (2005-10-27 14:19) 

harry

そうですね、最近「コレは観たいっ!」というSFは、なかなか無いですねえ。
DVDで見かけた「ガタカ」、面白そうですよ。
あと、ちょっと前ですけどジョン・カーペンターの「遊星からの物体X」は凄いです。鼻水が出る怖さなのに、なぜか笑ってしまいます。
あと、冗談だか本気だかわからないのが難ですけど、「ゼイ・リブ」「SFボディスナッチャーズ」なんかもなかなか味がありますよ。
真面目なSFの小品では「サイレント・ランニング」なんかも好きです。「アンドロメダ...」も良かったですね。。
みんな結構昔に見たんですけど。
by harry (2005-10-27 23:04) 

おっと

こんど探してみまーす。
by おっと (2005-10-28 23:45) 

GS-XR

現在「銀河ヒッチハイク・ガイド」が個人的にヒット中です。
公式サイトはこちら。
 ↓
http://www.movies.co.jp/h2g2/main/global/index.html

思わずオンエア版DVDまで借りてしまいました。
 ↓
http://posren.livedoor.com/detail-35418.html
モンティ・パイソンとか好きなんですよ(笑)
by GS-XR (2005-10-29 00:29) 

harry

GSさん、遅レスになっちゃいました、すいません。。
↑これ、知らなかった!面白そうですねえ。イギリス人はこういうの得意だものなあ。これと「未来世紀ブラジル」で週末2本立てっていうのもいいかも知れないですね。探してみます!
by harry (2005-10-31 22:56) 

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