身近な別世界へ。 [HONDA CL400]
「火曜日以降は全国的に涼しくなってきそうです」
天気予報が告げる。
日めくりカレンダーみたいにある日突然秋がやってくるんだろうか...なんて思っていたら
本当に火曜日の朝は前日までとは違う爽やかさだった。
今日はそのまま気温が下がって、午後からは雨だという。あらら。
降り出さないうちに、ちょっとだけ出掛けてみようか。
相棒を誘って先月登ってみた我が家の近くの高原まで。こういう日は銀馬君だ。
山に登り始める前に、パンを補給しておくことにした。
市役所のすぐ隣のこの店は、なかなか美味しいデニッシュを揃えている。
サドル・バッグに入れた水筒には、冷たいお茶。
空にはぼんやりと薄雲が広がっていて、陽射しは柔らかく遮られている。
市街地でも暑さは感じなかった。数日前とは全く違う空気だ。
民家の脇の急坂へ入り込んでいくと、数分で高原への入口へ。かなりの涼しさ。
一人で来た時には軽やかに登れて楽な坂道のように感じたけれども、
二人乗りだとエンジンをそれなりに回さないと登っていかない。
「今日は重いよー、って言ってない?銀馬くん。。」
タイトなコーナーからの立ち上がりでは、ガルルルルと咆哮を上げて登っていく。
それでも傾斜の緩やかな場所で感じる丸みのあるトルク感はかなり気持ちがいい。
牧場の入口に到着。
霧がかなりの速度で横切っていく。
そろそろ手に入れてから丸10年。転倒も立ちゴケも無く、大きな故障とも無縁。
良く出来た機械だと思う。
牧場の横をのんびりと抜けた先で一瞬雲が流れると、右手の眼下に諏訪湖がちらり。
雲行きが穏やかそうなのを見て、もう一度鉢伏山まで進んでみることにする。
ぐんぐんと標高が上がって、下界はほとんど見えなくなった。
行き止まりの山荘まで来て、今日は少し停まってみることにする。駐車場代は200円。
ふと、こういう場所に少しでもお金を落としていった方がいいような気がした。
景色を楽しんでそのまま帰ってしまっても罪はないのだろうけれども。
こじんまりとした山荘には、ちょっと映画俳優的にハンサムで美声の髭の男性が一人。
少し肌寒く感じたので珈琲をお願いすると、5-6分で入りますから、と言う。
入口に近いテーブルには読みかけの新聞。
カウンターの上にはニッコウキスゲやレンゲツツジの咲き乱れる様子が写真パネルで飾ってある。
色の褪せ具合からするとかなり前の写真かもしれない。
最近は霧が峰でもニッコウキスゲが少ないと聞きましたが...
「今年は本当に少なかったですよ。10株咲いたかな、っていうくらいで」
なんで減ってしまったんでしょうね。
「うーん、いろいろ諸説あるみたいですけど...鹿が食べちゃう、とかね。
ま、実際に食べてるのを見ますよ(微笑)。
生態系が少し変わって鹿の活動する範囲が移動してきているとかね、いろいろ言いますけど」
カウンター越しにペーパー・ドリップで淹れている珈琲の香りが広がってくる。
聴いているだけで気持ちのいい声で、つい耳を傾けてしまう。
ここは人気のない場所なので...といいながら、表情はそんな静けさを喜んでいるようだった。
我々が元々この地の人間ではないとわかると、にっこりしながら棚から何かを取り出した。
この辺の人なら皆知ってるお菓子なんですよ、そう言って出してくれたのは
胚芽の入った固めの薄く焼きあがった生地にうっすらと紫色がかったクリームを挟んだ
素朴な雰囲気のクッキーだった。しっかりとした噛み応えで、妙に旨い。
ただ単に空腹だったのかもしれないけれども。
我々が気に入ってむしゃむしゃと齧っていると、じゃあ残りもあげましょうと
ビニール袋に入った一包みを手渡してくれた。
「ちょっと余っちゃってね、どうしようかと思ってたんですよ(笑)」
最後まで気持ちのよい声だった。
風はずっと同じ方向に吹いている。
どちらを選んでも、扉温泉まで2時間。
ほんの少し歩いていくと、ぐんぐんと下っていくようだった。
深い谷を挟んで、向い側に扉温泉から美ヶ原へ登る道が見えていた。
*撮影:カメラロボ1号
下の写真を撮っているワタクシ、それを撮っている相棒。気がつかなかったよ。
雲が流れて、美ヶ原のシンボルがちらり。
バイクの傍らまで戻ると、下界は再び厚い雲に覆われ始めていた。
ちょうど正午になる頃、のんびり早めに帰ることにしよう。
尾根道を気持ちよく走って、森に突入してからは転げ落ちるように下り、
あっという間にいつもの見慣れた風景に戻る。空気は少し湿っている。
雨粒が一向に落ちてこないのをいいことに、ちょっとホームセンターに寄り道していたら
いつの間にかしっかり雨が降り始めていた。
もう我が家は目と鼻の先だからいいのだけれども。
家に着いてからさっと雨の飛沫を拭いて、
一瞬雨が止んだ隙にカバーを掛けて終了。
あまり訪問者もいない山の上で一年の半分を過ごすのはどんな気分なのだろうと
貰ってきたクッキーを眺めながら少しだけ考えてみる。
頭の隅の方で、そういう暮らしも悪くないような気がしたりして。
絵を描いたり、手紙を書いたり...自分宛に。なんてね。
こんにちは。
標高の高い所にも色々な事が起きている様で…
< あまり訪問者もいない山の上で一年の半分を過ごすのは
う〜〜〜む、仙人とか修験道者とか...(ヲイ
by HIRO (2010-09-15 21:10)
またまたお邪魔します。
高原のはずれに山頂のようなところがあり、絶景を拝んだ覚えがあります。
快晴の夕方で人もなく、大パノラマを独り占め。
ところで、私も先月から乗り始めたCLは、もっぱら日々の通勤や営業
での利用です。(以前の仕事関係です。)
おっしゃられるとおり、前傾のシートがむかつきますね。
でもアンコ盛ったら足届かないし、抜けば絶対、窮屈だろうし…
私は1インチ以内位で、ケツ下げたい感じで検討中です。
by 木菟 (2010-09-16 02:31)
おぉ〜ここが、私の行ってみたい高原なんですね♬次回は扉温泉と♨セットで行ってみたいです(^_−)−☆
by barbie (2010-09-16 08:34)
☆HIROさん、こんばんは。
なんだかいろんな所で変化が起きているような気がしてきました。
大町の温泉街には猿が山からたくさん下りてきて
ホテルの入口でぶらぶらしてましたし(笑
仙人...ちょっと憧れてます。霞み食べて長生きして。
☆木菟さん、またまたいらっしゃいませ。
いや、申し訳ないですけど本当にどなただか思い当たらなくて。
ちょっとヒントでもいただけませんか?(微笑
シートはそのうちに必ずあんこを盛って、
昔のトライアンフみたいな無骨な奴にしてみようと思ってます。
自分のは適当にリア・サスがへたってきて、
今がちょうどいい具合なんですけどね(笑
☆barbieさん、なかなか感じの良さそうな風景でしょ。
行き止まりなので戻ってこないといけないのと、
ハーレーだと途中の登りはちょっときついかな...
扉温泉で休んで、アザレアラインでビーナスに抜けて帰ると
気持ちいいルートになりそうですね。ぜひどうぞ♪
by harry (2010-09-16 21:12)
今年は本当に「がっちゃん」と音を立てるようにして、季節が変りましたね。
日曜にそちらへ行った時は最後の残暑という感じだったけど、
今ではこちらでもすっかり空気が変りました。
なるほど、あそこを守っているのはそんなナイスガイでしたか。
今度その美声を聞きにいってみようかな。
中3から高校くらいにかけて、そんな人生を夢見ていましたけど、
しっかり自己管理ができない自分にはやっぱり無理でしょうね。
ツーリングやトレックに出かけて、そんな暮らしに自分を重ねているのが
幸せなのかも。
by YASH (2010-09-17 22:53)
☆ほんとに誰かがボタンでも押したみたいな感じでしたね。
こういう切り替わり方は個人的には勘弁して欲しいですけど。
彼の声は今でもはっきり思い出せます。
笑顔がまたよくてね。
気に入った土地に居場所を見つけられて良かった...
という気分なのかもしれないなあ、なんて思って話してました。
自分もそういう場所が見つかったら、考えてみます(笑
by harry (2010-09-20 00:15)
>自分もそういう場所が見つかったら、考えてみます
harryさんはある意味
見つかったんじゃないかなぁ・・・
by FTドルフィン (2010-09-20 10:09)
☆FTさん、そう言われてみると、そんな気もしてきました(微笑
東京時代からしたら、ある意味、夢のような生活でもあって。
あとは、静かに一人で出来る仕事が見つかったら
最高なんですけど...欲張りません(笑
by harry (2010-09-20 23:12)